下記の記事は2020年3月2日に「日経クロステック Special」に掲載されたものです。
拡張性の高いパソコンで生産性向上を!
BIM、VR時代に失敗しないマシンの条件とは
建築設計には今、BIMやVRなどの3D技術が急速に導入され生産性向上や働き方改革も喫緊の課題だ。
これからの時代、パソコンに求められる条件は何か。
建築家の山代悟氏と建設ITジャーナリストの家入龍太氏がエプソンダイレクトの「Endeavor Pro9000」を前に語り合った。

建築ITジャーナリスト
関西大学 総合情報学部 非常勤講師
家入 龍太氏
建設業におけるBIMやAI、ロボットなどの新技術活用についての情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。公式サイトは「建設ITワールド」
ビルディングランドスケープ共同主宰
建築家 博士(工学) 芝浦工大 建築学部 教授
山代 悟氏
1969年 島根県生まれ。93年東京大学建築学科卒業、95年東京大学大学院修士課程終了後、2002年まで槇総合計画事務所所属を経て現職。
安藤忠雄氏の助手も務めた東大時代
家入 山代さんは建築家であるとともに、芝浦工業大学建築学部の教授も務めておられますね。そして工学博士号も持っていらっしゃいます。いったい、どんな建築家人生を歩んでこられたのでしょうか。
山代 東京大学の建築学科で、大野秀敏先生に指導を受けて大学院まで出た後、槇文彦先生の事務所で7年修行しました。その後、2002年に東大に戻り、安藤忠雄先生の助手や難波和彦先生の助教を務めました。
家入 あの安藤忠雄さんの助手を務められたとは。安藤さんは、どんなふうに学生を教えていたのですか。
山代 安藤先生はインターンの学生をよく、事務所に受け入れていました。4週間の受け入れ期間のうち、8回ある土日は、ひとつのお寺を何度も見に行け、8回も行っているうちに、見えてくるものがある。8回も訪ねていくと、和尚さんもその熱意に負けて一般の人には非公開の部分まで見せてくれるようになるから、と。
家入 なるほど、建物を何度も見ているうちに細部まで理解できるようになるというわけですね。難波先生とは、どんな研究をされましたか。
山代 街並みを丸ごと3Dモデル化して、コンピューターで風の流れ方を求める流体解析なども取り組まれていました。槇先生の事務所に就職したのが1995年、あのWindows95が登場した年です。当時の設計ツールは手描き図面や2次元CADが混在した面白い時代でした。
家入 その後、2002年に独立され西澤高男さんとともに「ビルディングランドスケープ」という設計事務所を立ち上げました。どんな事務所ですか。
山代 スタッフ数は6人なのに拠点が東京のほか山形や大阪、広島など6カ所もあります(笑)。全員が集まることが難しいので、事務所内の会議は、ビデオ会議で行っています。また、社内ではインターネットメールは使わず、SlackやTalknoteなどのコラボレーションツールを使っています。画面上で社員全員が集合できますし、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の画面を共有しながら、ディスカッションすることもできます。出張先からでも会議に参加できますよ。
木造建築とITが融合
家入 山代さんは建築分野の中でも、特に木造建物の設計法の開発に取り組んでおられるそうですね。
山代 はい、木造の建物というと、大工さんが経験にもとづいて設計・施工を行ってきた木造住宅を思い浮かべるかもしれませんが、私が取り組んでいるのは、十数階建てのオフィスビルや集合住宅のような大規模な建物です。これだけの規模になると鉄骨造のビルと同様に、コンピューターを使った構造計算によって設計する必要があります。中大規模木造の推進委員会のメンバーとして、標準設計法の開発や施工技術の整理を行っています。
家入 そんなに大きな建物を木造で建設した例は見たことがありませんが、現場はどんな状態になるのでしょうか。
山代 部材も60㎝角とか大きくなりますので、大工さんが現場で切ったり彫ったりするわけにはいきません。柱と梁の接続部などの「仕口」は、あらかじめBIMソフトで3次元形状や納まりの細部までしっかり設計しておき、そのデータをもとに部材を工場で加工します。また、部材の組み立て順序も事前にシミュレーションしておきます。
家入 部材のスケール感が、木造住宅のイメージとは全く違いますね。
山代 ええ、現場で各部材を組み立て順通りにクレーンが吊り上げられるように、部材を仮置きするときも組み立て順序通りにしておきます。そして部材にはQRコードを張って、BIMモデルと対応させながら現場への搬送も管理します。
家入 木造建築の技術に、ITが組み合わさって、BIM時代の新しい施工法が生まれてきたわけですね。
山代 このほか、古い木造建物のリニューアルも手がけています。昭和初期などに建てられた木造の酒蔵や屋敷、倉庫、住宅などをリニューアルするためには現況図面が必要になりますが、図面が残っているものはほとんどありません。そこでメジャーでの実測や360度カメラによる記録写真から、図面を作ることから始まります。
家入 リニューアルの分野では最近、建物の内部の3D形状を計測する3Dレーザースキャナーや、写真測量の原理で3Dモデル化するフォトグラメトリー技術が急速に普及しつつありますね。
山代 昨年、宮崎県都城市で解体された旧・都城市民会館が解体直前にクラウドファンディングによって資金を集め、ドローンや3Dスキャナー、写真によって現況を3Dモデル化したニュースが話題になりました。実物の建物をリニューアル保存するのも重要ですが、これからは在りし日の姿を“バーチャル保存”することも、建物保存の選択肢の1つになるでしょう。

巨大な木造建物のBIMモデル。各部材は仕口の形や納まりまでが3Dモデルで設計されている
模型からバーチャルリアリティーへ
家入 山代さんが建築プロジェクトを進めていくプロセスで、重視していることは何ですか。
山代 まずは模型を作ってみることですね。模型をみんなで、いろいろな角度から見ているとたくさんの気づきを得ることができます。その気づきを設計にフィードバックしながら、よりよい設計に仕上げていくプロセスが重要です。
家入 じっくり模型を見ていると、“神は細部に宿る”の心境が理解できるようになってきそうですね。
山代 しかし、模型は事務所に行かないと見られませんし、設計が変わったら作り直さなければいけません。そこで最近はまず、3Dモデルを作って検討してから模型を作るようにしています。3Dモデルでも、1時間くらいかけていろいろな角度から見ていると、気がつくことがたくさん出てきます。模型だけだと私が出張に出掛けている間は、プロジェクトがストップしてしまいますが、3Dモデルなら中国でも欧州でも、出張先で確認してスタッフに指示することもできるというメリットもありますから。
家入 模型のような「手待ちのムダ」がないので、設計業務もスピーディーに進みそうですね。
山代 はい、その分、残業なども減るので3Dモデルによる検討は、働き方改革につながるのではないでしょうか。さらに実寸大で立体視できるバーチャルリアリティー(VR)は、没入感があるので、本当に建物が完成した現場に立っているように感じますね。これが本格的に普及すれば、各地にいる建て主や設計者、施工者などがVR空間に集まって会議することで、建築界につきものの「移動のムダ」も大いに削減できそうです。

これからの建築設計界では、いつVRによる設計業務やプレゼンテーションが必要になってもおかしくない
BIM、VR時代に”成長する”パソコンを
家入 私の主な仕事は文章を書くことです。BIMソフトが動かせる程度のスリム型ワークステーションを使ってきましたが、考えが甘かった。ある日、趣味のフライトシミュレーターでVRを使おうと、高性能のグラフィックボードを取り付けようとしたら、スリム型のワークステーションには大きさの面で無理でした。そこで、新たにVR用のパソコンを買う羽目になりました。
山代 一般の設計者も同じでしょう。これまでの建築設計ツールは2次元CADが中心という人も多いので、あまりパワフルなパソコンはいらなかったけれど、これからはBIMのほか、VRや点群などデータを見たり、使ったりする必要が急に出てくる可能性があります。できれば設計者全員がこうした業務に対応できるように準備しておきたいところです。その点、ここにあるエプソンダイレクトの高性能パソコン「Endeavor Pro9000」は、1つの有力候補です。CPUにはインテル® Core™ X シリーズ・プロセッサーを搭載しているので、解析やシミュレーション、CG制作などをスピーディーに行える地頭の良さを持っています。ケースもゆったり作られているので、拡張性にも余裕があり、これからの設計者は安心して使えそうですね。

Endeavor Pro9000の大きな特徴は、本体正面から簡単にハードディスクやSSDの交換・増設ができること
家入 少子高齢化で人手不足が深刻化する日本では、設計者はますます貴重になってきます。パソコンにも、これまで以上に投資していくことが求められるのではないでしょうか。パソコンをケチったばかりに、作業がはかどらず仕事がなかなか終わらないというのでは、本末転倒ですからね。
山代 例えば、急にVRを使うことになっても、VRに強い米NVIDIA社の「GeForce RTX シリーズ」やBIMに強い「NVIDIA Quadroシリーズ」といった高性能のグラフィックボードをさせばすぐに対応できます。また、メモリーも256GBまで増設できます。つまり拡張性があるのでいろいろな方向に進化できます。
家入 あと、ユニークなのは本体の前面がドアのように開いて、ハードディスクやSSDを交換できる機構を備えていることですね。大きなBIMモデルや点群データを使ったプロジェクトでは、大容量のハードディスクにデータを納め、USBメモリーのように交換して業務を行うこともできそうです。
山代 こんなパソコンは初めて見ました。ドアの開閉機構は特許を取得されているそうですね。
家入 パソコンのケースには持ち運びやすいように取っ手のほか、オプションで本体の下に取り付けるローラーも用意されています。大きなパソコンは机の下に置くことも多いですが、簡単に引っ張り出せるとDVDを焼くときや、お掃除ロボットにパソコンの裏側を掃除させたりするのに楽ですね。

グラフィックボードなどを増設するときも、後部のつまみをスライドするだけで簡単にカバーが外せる
山代 事務所に1台くらいは、こんなハイスペックのパソコンがあると安心ですね。私の事務所にもパワフルなマシンが置いてありますが、出張のときはタブレットとスマホから遠隔操作できるので出張も身軽です。「Endeavor Pro9000」を遠隔操作で共有するという使い方もありだと思います。
家入 故障しても1日で修理してくれるサービス体制や、保証期間も最大6年ついているというのも、エプソンダイレクトの品質に対する自信の表れではないでしょうか。もはやワークステーションと言っても過言ではありません。こんな高性能なマシンを、普通のパソコンと同じようにネットで注文すれば、わずか2日間で出荷してくれるのは、いざという時に助かりそうですね。
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