下記の記事は2019年4月19日に「ITmedia PC USER」(ITmedia)に掲載されたものです。
18コアの衝撃――ワークステーションクラスのCPUを搭載した
「Endeavor Pro9000」
エプソンダイレクトのミドルタワー型PC「Endeavor Pro9000」は、同社が手掛けるPCラインアップの頂点に立つフラグシップモデルだ。
Intel Coreシリーズでは最新のハイエンドシステムを採用し、スペックはBTOによるカスタマイズに対応する。最大18コア・36スレッドのCPUを選べる他、最大128GBメモリ、Optane SSDなど超高速ストレージ、10GbE対応有線LANなど超ハイスペックの仕様を搭載できる。
単に超ハイスペックというだけでなく、高負荷運用を想定した熱設計による長期的な信頼性に配慮。さらにメンテナンス性、拡張性など、PCを長く安心して使うためのさまざまなこだわりが詰め込まれているのが特徴だ。
Endeavor Pro9000は、エプソンダイレクトのフラグシップモデルだ。
最大18コアのCore-Xをはじめとする超ハイスペックと、エプソンダイレクトならではのこだわりが目を引く
映像制作、設計や解析、社会課題解決まで……
時代のニーズに応えるスペック
こうした超ハイスペックのPCは、映像制作などのコンテンツ制作での需要が高い。4K/8K、AR/VR、HDRなど、高画質化とともに表現の幅も広がっており、データサイズが巨大化、処理するPCに求めるパフォーマンスは高まる一方だけに、メニーコアをはじめとするハイスペックは業務効率化に直結するだろう。
また、最大18コアものメニーコアCPUを搭載できるとなると、従来はXeonを搭載する大規模なワークステーションで行っていた用途の代替としても注目される。例えば、3D CAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)、CAE(Computer Aided Engineering)などのアプリケーションを活用した設計や解析、建築のBIM(Building Information Modeling)、土木/都市開発のCIM(Construction Information Modeling/Management)などがそれに当たる。特にCAEにおける放熱設計のシミュレーション解析や建築物の構造解析などは一般的に10コアを超える演算性能が求められるため、Pro9000にうってつけの用途だ。
さらには、高齢化や労働人口減少のための社会課題を解決するためのIT化、IoT活用が進む中、新たな市場も生まれつつある。工場の自動化、自動運転、手術支援、ドローンを活用した宅配などだ。こうした用途では、監視カメラやドライブレコーダー、ドローンで撮影された映像をリアルタイムで高速に処理していく必要があるだけに、このような超ハイスペックPCの出番が増えてくるだろう。
最大18コア・36スレッドのメニーコアCPU
CPUには、メニーコアのCore-X(開発コード名=Skylake-X)を採用している。
BTOメニューには、最大18コア・36スレッドのCore i9-9980XEを筆頭に、12コアのCore i9-9920X、10コアのCore i9-9900Xなど、メニーコアのCPUがそろう。
CPUのコアは、OSやアプリからの命令を取り込み演算処理を行う部分のことで、コアが複数あると計算を並列して行える。たくさんの荷物を1人で運ぶより10人で運んだ方が速く運び終わるのと同様、コアが多いほど処理が高速になる。
2~3人で楽に運べるような荷物を10人で運んでも速くならないように、10コア以上ともなるとアプリ側もある規模と最適化が必要になるが、コンテンツ制作や設計、解析などを行うアプリケーションはメニーコアに最適化されているものが多く、その威力は実戦ですぐ実感できることだろう。
なお「スレッド」は1コアぶんの命令のこと。Hyper-Threading(HT)対応CPUは、1コア当たり2スレッドを処理できる。コアそのものを増やすほどではないものの、同時処理スレッドも多いほど処理性能は上がる。
CPU-Zの画面。評価機は18コア・36スレッドの最上位のCore i9-9980XEを搭載
タスクマネージャーCPU使用率表示の様子。36の論理コアがズラリと並ぶ様子は壮観だ
クアッドチャンネルの高速アクセスとOptane SSDも選べるストレージ
メモリアクセス性能が高速で、かつ大容量のメモリを搭載できるのもCore-Xシステムの特徴だ。Endeavor Pro9000ではPC4-21300 DIMMを最大128GBまで搭載可能。4枚1組で利用することで転送速度を4倍にするクアッドチャンネル転送に対応しており、4枚1組の構成ではメモリ帯域83.2GB/sと、第9世代Core(Coffee Lake-S)の2倍を超える速度でメモリアクセスが行える。これは大量のデータを次々に処理していくことが求められるマルチメディア処理、リアルタイムの画像、映像系処理などのパフォーマンスに効いてくる。
超高性能ストレージを含め、柔軟なストレージ構成を搭載できるの特徴の1つ。PCI Express(NVMe)対応のM.2ソケットを2基、さらに2.5インチ/3.5インチベイを4基装備しており、最大で6基のストレージをBTOで選択できる。データを二重化して保護する「RAID 1」やデータ二重化と高速化を同時に行う「RAID 10」構成も選べる。
また、BTOではIntelのOptane SSD 905Pも選択可能。Optane SSDは、IntelとMicronが共同開発した「3D XPointメモリ」を採用したSSDで、通常のNAND型フラッシュメモリよりも格段に高い耐久性とランダムアクセス性能を備えている。さらに、HDDと組み合わせて比較的リーズナブルなコストで高速なレスポンスと大容量を実現する「Optane Memory」も用意されている。
なお、2.5インチ/3.5インチベイは、ケースのカバーを開けなくともアクセスできる「フロントアクセス」を採用。着脱が容易にできる。映像作品などは容量が大きいため、クリエイティブ用途では、ドライブごと納品したり、管理/保管したりすることがあるというが、そういう場面では特にありがたい仕様といえるだろう。
ケースのカバーを開けなくともストレージにアクセスできる「フロントアクセス」を採用。
2.5インチSSD/3.5インチHDDの着脱が簡単にできる
GeForce RTXやQuadroも選べるグラフィックスカード
コンテンツ制作や設計、解析などの業務ではグラフィックスカード(GPU)の性能も重要だ。ただ、利用するツールや現場の事情によって求められるGPUの種類はさまざま。CPUをアシストする程度のGPUアクセラレーションの場合もあれば、GPUレンダリングに対応するなど、GPUの性能が生産性に直結するツールもあるし、CADやCAMなどでは性能の最適化、描画の再現性などからプロユースのQuadroを使うことが必須とされている現場もあるだろう。
Endeavor Pro9000のBTOメニューでは、そうした現場ごとに異なるニーズに応えられるよう、幅広い選択肢を用意している。エントリークラスのNVIDIA GeForce GT 1030から超ハイエンドのNVIDIA GeForce RTX 2080 Tiまで、GeForceシリーズだけで6種類。さらにプロユースのNVIDIA Quadroも3種類と、合計9種類の中から選択できる。
グラフィックスカードは9種類から選択可能。
評価機は、最新のGeForce RTX 2080 Ti搭載カードを搭載していた
GeForce RTX 2080 Tiはリアルタイムレイトレーシングに対応する最新世代の高性能GPUだ
BTOで多様な構成に対応、際立つ拡張性
ボディーには5インチベイや3.5インチオープンベイも装備。光学ドライブ(最大2基)やSDメモリーカード(SDXC対応)とコンパクトフラッシュに対応したマルチカードリーダーなどを搭載できる。
本体サイズは約216.8(幅)×498.7(奥行き)×470.8(高さ)mm
通信機能は有線LAN(1000BASE-T)を標準装備する。BTOでは追加の有線LANボードの増設が可能で、10Gbitの高速転送ができる「10GBASE-T」対応有線LANボードも選択可能となっている。
さらに、インタフェース拡張オプションも豊富だ。USB 3.1の他、シリアルポートやパラレルポート、IEEE 1394ポートなど、レガシーインタフェースも追加できる。特に、現在でも業務用で需要の多いシリアルポートについては、ボディー背面にパンチアウトを用意して拡張カードなしでの追加も可能だ。
ミドルタワー型として標準的なサイズを維持しながら、これほどの拡張性、BTOの多様性を可能にしているのは、ボディーとマザーボードを専用で設計しているエプソンダイレクトならではの強みだ。
本体前面(写真=左)と背面(写真=右)。フロント端子として、ヘッドフォン出力、マイク入力の他にUSB 3.0を3基装備。
3.5インチオープンベイには、SDメモリーカード(SDXC対応)とコンパクトフラッシュに対応したマルチカードリーダーを搭載できる。
現在でも業務用で需要の多いシリアルポートについては、ボディー背面にパンチアウトを用意して拡張カードなしでの追加も可能
特に独自設計のマザーボードは、Core-XとX299チップセットならではの豊富なPCI Expressレーンを活用した独自の拡張スロット構成としている。x16フルレーンでの動作が可能な2本のPCI Express x16スロットに加えて、Optane SSD 905Pや10GBASE-T対応有線LANボードが使うPCI Express x4を2本、M.2ソケットも装備。さらに、根強い需要が多いPCIスロットも搭載している。
超ハイエンドパーツのポテンシャルをフルに発揮できる優れた熱設計
ハイスペックパーツで構成したPCは、パーツそれぞれが通常に比べて発熱が高い傾向にある上、制作や解析業務などでは高負荷で長時間使用されることもあるだけに放熱設計は非常に重要になる。放熱が不十分だと、サーマルスロットリングなどが発生して、パフォーマンスが低下する可能性があり、安定性や長期耐久性にも不安が出てくる。
Endeavor Pro9000に放熱面の不安はない。フロントからフレッシュエアーを取り込みリアに排気するスタイルのケースに、サイドフロー(リア側排気)のCPUクーラー、リア排気のグラフィックスカードを組み合わせることで、ボディー内の熱をリアからより効果的に排出できるエアフロー経路を確保。メニーコアCPU向けに、CPUクーラー自体の冷却性能も大幅に強化し、最適にファンコントロールを行うことで、安定稼働はもちろん、静音運用も実現している。
エプソンダイレクトには長年ハイスペックPCを開発してきたノウハウの蓄積があり、同社のPCはエプソングループの施設を活用して開発段階で入念な放熱性能と静音性のテストを行って開発されている。このあたりは全幅の信頼を置いて任せることができる。
サイドパネルを開けると、拡張カードを固定するストッパーがあり、これを外すことで内部にアクセスできる。
フロントからフレッシュエアーを取り込み、リアへスムーズに排気するエアフロー経路を確保し、
放熱を効率化している。高性能なCPUとGPUによる高負荷運用を想定した設計だ
メニーコアCPU向けにCPUクーラーも強化。ヒートパイプを大口径化し本数を増やすとともに放熱フィン面積も拡大した
新設計ボディーは使い勝手、メンテナンス性も上々
Endeavor Pro9000のボディーは、使い勝手やメンテナンス性にも優れる。各種パーツの固定を樹脂製のアタッチメントパーツで行う「ツールフリー構造」となっており、ほとんどのパーツの着脱が工具なしで行える。また、3.5インチ/2.5インチ兼用のドライブベイは「フロントアクセス」を採用し、ドライブサイドカバーを外さなくともフロントからすぐにアクセスできる。
天面のキャリングハンドルが付いている点もポイントだ(BTOで外す選択も可能)。品質重視のボディーはかなり重いが、ハンドルによって体感的な負担が大幅に減り、持ち運びは意外にしやすくなっている。また、BTOでは専用キャスターも用意されており、室内でちょっと移動したいといった場合には便利なオプションだ。
余談になるが、Endeavor Pro9000は、外箱の構造も工夫されている。緩衝材を分割構造にしてキャリングハンドルを上にして収納されているため、箱の中にある状態からハンドルを使い、そのまま持ち上げて取り出せる。地味ではあるが、このようなきめ細かい部分まで配慮が行き届いている点にメーカーとしての真摯な姿勢を感じることができる。
ベンチマークテストで性能を検証
ベンチマークテストで性能を確認しよう。評価機のスペックは、CPUがCore i9-9980XE、メモリが128GB(PC4-21300、クアッドチャンネル)、ストレージがOptane SSD 905P、グラフィックス機能が、GeForce RTX 2080 Tiという構成である。
CINEBENCH R15は、CPUの性能がストレートに反映されるCGレンダリングのテスト。CPUスコアは3225とまさに圧巻だ。メインストリーム最高峰のCore i9-9900Kを圧倒的に引き離し、18コア・36スレッドのパワーを十分に発揮している。Premiere Pro CCのプロジェクト書き出し(主にエンコード)でもやはりCore i9-9900Kを圧倒する結果になった。やはりメニーコアは、レンダリング、エンコード処理に効果的なことが分かる。
CINEBENCH R15のスコア
CINEBENCH R15の性能比較。
Core i9-9900K搭載の自作PC(Core i9-9900K、16GBメモリ、512GB PCIe SSD、GeForce RTX 2080 Ti)を圧倒した
Premiere Pro CCの性能比較。こちらもCore i9-9900K搭載の自作PCに比べて断然速い
Optane SSD 905Pの性能は、CrystalDiskMark 6.0.2で計測した。最下段の4Kリード(QD1)性能に注目したい。NVMe SSDのスコアと比べても圧倒的で、これがOptane SSD、3D XPointメモリの真骨頂である。一般のクライアントPCでの作業は、その多くがQD1であるといわれているため、OSドライブにすれば、日常操作含めて全てのレスポンスが向上する。耐久性も高いので、仮想記憶ドライブにも向いている。
CrystalDiskMark 6.0.1のスコア(Endeavor Pro9000/Optane SSD 905P)。
最下段左の数字に(Read/4KiB/Q1T1)に注目
CrystalDiskMark 6.0.2のスコア(Samsung PM981)
PCの総合性能を見るPCMark 10 Extendedも実行した。スコアはご覧の通りで 「(ベンチマーク結果が投稿されている)全PCの98%よりも上」というまさにトップクラスの結果となった。
PCMark 10 Extendedのスコア
総合スコアは、UL Benchmarksのサイトに投稿された「全PCの98%より速い」というトップクラスの評価だ
PCMark 10 Extended実行時の温度計測の結果も確認しよう。このテストは終盤に一般のPCにとっては過酷な処理も含まれており、通常のハイエンドPCだとCPU温度が一時的に90℃を超えるようなこともあるのだが、Endeavor Pro9000では、CPUは66℃、GPUも75℃が最高。最高の処理性能と、高い冷却性能を両立していることを実証している。
しかも、動作音が実にマイルド。机の上で顔から60~70cmくらいの距離に設置しても、アイドル時は動作していることが分かるレベルで、一般的なエアコン等と大差ない。高負荷をかけても少し大きくなる程度。前述したこだわりの熱設計を裏付ける結果だ。
PCMark 10 Extended実行中の温度の推移。
CPUは66℃、GPUも75℃が最高。最高の処理性能と、高い冷却性能を両立していることを実証している
専門ツールのグラフィックス性能の目安として、SPECviewPerf 13の結果を見てみよう。これは実際の3DCG/CADアプリケーションのビューボードを描画してパフォーマンスを計測する内容だ。
比較対象が一世代のゲーミングノートPC(Core i7-7700HQ、メモリ16GB、GeForce GTX 1050 2GB、512GB PCIe SSD)のため、全ての項目で圧倒的にEndeavor Pro9000が良い。メジャーな3Dモデリングツールの「Maya 2017(maya-05)」のテストでは、前世代ゲーミングノートPCの11.5倍ものスコアを出している。
Endeavor Pro9000でのSPECviewperf 13の結果
前世代ゲーミングノートPC(Core i7-7700HQ、メモリ16GB、
GeForce GTX 1050、512GB PCIe SSD)でのSPECviewperf 13の結果
時代のニーズに応える超高性能PC
ベンチマークテストの結果から、Endeavor Pro9000は、ウルトラハイエンドのハイスペック構成を搭載するだけでなく、そのポテンシャルをフルに引き出していることが分かる。高負荷時の温度や動作音も低く、最高の処理性能と、高い冷却性能、そして静音性をも両立していることを実証した。これは同社がアピールする熱設計に対するこだわりを裏付ける結果だ。
熱設計の優秀さは、高負荷運用における安定性、長期信頼性を考える上でも非常に心強い。大規模コンテンツ制作やCAD、CAMツールなどを使った設計や解析など、これまでXeonを搭載する高価なワークステーションで行われていた高負荷業務を代替して担わせるに十分な処理性能を持っているといえる。
エプソンダイレクトの製品は、標準でサポートセンターへ到着してから中1日で修理を行う「1日修理」体制を整えている他、オプションではサービスマンが訪問して修理を行う訪問修理サービスも用意する。定額料金でサポート期間を延長し、期間内なら追加料金なしで何度でもサポートが受けられる「定額保守」メニューも、業界最長水準の6年だ。このような手厚いサポート、長期保証ができるのも、耐久性、品質に対する自信があるから(修理等のサポートが必要となる件数が少ない)こそだろう。
コンテンツ制作用PCとして、CADやCAMツールなどを使う設計や解析用ワークステーションの代替として、そしてリアルタイムに映像処理などを行うIoT活用に、Endeavor Pro9000は、高い処理性能を現場にとって魅力的な存在といえるだろう。
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