エプソン PC MAG

ITmedia機種レビュー

下記の記事は2019年1月7日に「ITmedia PC USER」(ITmedia)に掲載されたものです。

人気イラストレーターのrefeia氏が「Endeavor MR4800E
イラスト・マンガ制作Select」をレビュー

エプソンダイレクトの「Endeavor MR4800E イラスト・マンガ制作Select」は、イラスト制作の定番ソフト「CLIP STUDIO PAINT」や、イラストレーターから広く支持されているワコム製液晶ペンタブレットの動作検証を独自に行っているカスタムモデルだ。人気イラストレーターのrefeia氏に使ってもらってみた結果は……

こんにちは! イラストレーターのrefeiaです。今回はエプソンダイレクトのクリエイターPC、「Endeavor MR4800E イラスト・マンガ制作Select」を紹介させていただきます。

本機は、通常のEndeavor MR4800Eをベースに、イラスト用途のツボを押さえた仕様の選定と、ソフトウェアや液晶タブレットの動作検証を行ったカスタムモデルです。これを実際にお絵かきに使いながら、実用上の感触や、本機ならではのメリットについてお話していこうと思います。

それでは早速、本機がどれくらいイラスト用途にぴったりなモデルなのか、見ていきましょう。

外観と接続をチェック

外観を見てみます。サイズ的には一般的なスリムデスクトップPCです。フロントパネルは、スーパーマルチドライブとCF・SDカードリーダーをきれいにカバーしています。

手に持つと思ったよりしっかりした剛性感があります

また、本機はCintiq Pro 16(ワコムリンクプラス使用時)およびCintiq Pro 24で動作確認が実施され、いずれの場合も4Kで問題なく接続できることが確認されていています。普段仕事で使用している手元のCintiq Pro 16に接続してみましたが、問題なく4K表示できました。

普段の製作環境のメインPCと想定して設置してみました

Cintiq Pro 16は特に接続がトリッキーなので、動作確認済みは助かります。

Cintiq Pro 16はUSB Type-Cの1本で接続するために4本のケーブル接続が必要

また、イラスト制作ソフトとしてはCLIP STUDIO PAINTの動作確認が実施されています。余計なものが入っていないクリーンなWindows 10と合わせて、変なことが起こりにくい安心感は良いですね。

お絵かきしながら使用感をチェック

それでは、実際にお絵かきをしながら、使用感や本機のスペックのツボなどを紹介していこうと思います。今回お借りしたのは、選択できる中では一番ベーシックな、Core i5-8400、GeForce GTX 1050 Ti、メインメモリ16GBという構成を自分から指定させていただいています。

ラフ。処理性能の低いPCだと意外とこの工程から引っ掛かります

今回はPhotoshop CCを使って、普段のレビューよりも負荷の高い制作スタイルでガンガン使っていきます。ラフの工程は試行錯誤などのために手の動きが速くなるので、意外とちょっとした遅延感などが快適さや集中力に関わってきます。本機は当然ながらブラシの遅延感もなく、快適に描けます。

色ラフも同様に素早くできないと気持ちよくないですが、巨大なブラシを使うことも増えるので、より要求が高くなります。

色ラフ。本機のフロントパネルっぽい服にできないかなと考えています

ここで、イラスト用途に求められる性能について、少しお話しておこうと思います。まず皆さんが一番よく使うと思われる CLIP STUDIO PAINTについて。これはメモリが足りている間の動作レスポンスはほぼCPUに依存すると考えて良いと思います。

Photoshop CCもCPUに大きく依存します。Photoshop CCはオンボードGPUよりも優れたGPUがあると有利になる処理が幾つかありますが、下位のGPUと上位のGPUでのパフォーマンスの差がほとんどない場合が多いです。

これらを考慮して、普段の制作ではCore i7-7700Kと、GeFroce GTX 1050 Tiを制作に使用しています。

メモリについては、16GBあれば相当高解像度のものをリッチなレイヤー構成で描いても、足りなくなることはほとんどないです。それに加えて、複数の制作アプリ、複数ファイル、多数のWebブラウザタブを開いたままで作業したいならば、32GB以上あると余裕があって良いと思います。

そう言っている間に線画が完成しました。線画は4Kで作業していると気持ちよさが違います。

線画完成

特にCintiq Pro 16はピクセルが非常に高密度です。表示品質が良い半面、4Kのピクセル量は2K時代と比べて3~4倍。それに応じて表示に必要な計算量も増えるので、以前よりもCPUが大事になります。

線画の拡大。指やペン芯の大きさと表示の緻密さを比べてみてください

それでは塗っていきましょう。まずは塗り分け。

塗り分け

塗りでは滑らかな表現のためにできるだけ大きいブラシを使います。服などでは数百ピクセルの場合もたびたびありますので、ここからがより第8世代Coreのパワーが生きる所ですね。まずは服と肌と目を塗ります

目の塗り

第8世代Coreで重い作業も快適

ところで、試用機のCPUにCore i5-8400を選んだのは、第8世代Coreは先代に比べて大幅にパワーアップしており、自分が使用しているCore i7-7700Kと同等の計算パワーがあると考えたからです。

CLIP STUDIO PAINTなどで重いブラシを使うのに1mmでもいいから助かりたい、という場合は、最大クロックを重視した選択をすると良いです。ただし、重くてしんどいどきには性能が2倍や3倍も足りていない場合も多く、制作スタイルを見直さないと結局助からない可能性があることは覚えておきましょう。

さて、髪の毛を塗って、背景の様子を見ているところです。背景は夜空に雲、液晶タブレットに腰かけている様子かな、と考えています。

腰かけている液晶タブレットは恐らく完成するとよく見えなくなりそう

雲用に使っているブラシも数百ピクセルの巨大サイズを多用するので、ここもPCが遅いと気になるところです。ここでも普段と比べて遅いと感じることはありませんでした。

雲用ブラシ、直径400pxです

パーツそれぞれに調整レイヤーをかぶせて、色味を足したり明るさを調整していきます。この処理をしたあとのデータは猛烈にブラシなどの計算が重くなりますが、自分の制作PCと同じレベルで生きのびることができています。Core i5の中でも上位でないCPUでここまでいけるというのは本当にうらやましいです。

調整レイヤー無双。もっと巨大な絵で、遅くて無理なときはレイヤーを統合したものを作ってやり過ごすこともできます

あとは光の効果を足して、

下からキラキラ

さらに足して、完成です。このあたりの最終工程は、直接は見えない巨大な効果レイヤーや調整レイヤーなどを増やしていくのでCPUパワーやメモリをがぶがぶ飲みますが、ここも全く問題なくこなせました。

キラキラにキラキラを足して足して足して完成

ところで、本機のアフターサポートについても少しお話しておきたいです。詳しくは公式サイトでチェックしてほしいのですが、ざっくり書くと

・引き取り修理の場合は到着後1日の高速修理
・訪問修理も選べる最大6年もの長期間保守

という保守プランが、リーズナブルに提供されています。

業務・趣味を問わず、個人のイラスト用途だと、機材の予備を買っておくか、すぐに追加で買える予算を持っておかない限りは、故障から1~2週間のダウンタイムを覚悟せねばならない場合が多いです。PCだけとはいえ、これは本当に頼もしいです。

そりゃあ自分だってPC自作マンの端くれなので、自作の仕事PCが壊れたらアキバに走って1日で直すぞという気持ちはあります。ありますが……知識も必要だし、実際とても疲れる上に、費用も掛かります。
つまりプロのサポートには勝てないです。

まとめ

というわけで、ここまで見てきましたが、全体として非常に満足のいくPCでした。

本機の紹介をお受けした理由は主に、パーツ選定の仕方が自分の考えにぴったり合っていること(あとは妹夫婦がエプソン勤務で、話のネタにしたかったから)でした。それを満たした上で、動作検証などの安心して導入できる環境作りと、強力なアフターサポート、この3方面がしっかりと固まっています。仕事や、趣味でもがっつり使いたい目的において、本当に頼りになると思います。

自分はたぶん、デスクトップPCについては、今後も自作を続けると思います。ですが、それはそれ自体が趣味だからです。

特にPCいじりが好きというわけではなく、でも本格的なPCでイラスト制作に取り組みたいみなさんや、既に仕事などを通じてより安心して制作に没頭できる環境を欲している方は、この機種を一度じっくり検討してみると良いのではないでしょうか。

関連リンク

  • ※記載されている情報は2019年1月7日時点のものです。予告無しに生産、販売を終了する場合や価格、仕様、その他の情報が変更になる場合があります。また、本サイト上で使用している画像はイメージです。実際のデザイン、外観、色味など異なる場合があります。
  • ※特に記載がない限り、本サイトの表示価格は、消費税抜きの価格(税抜価格)になっております。
  • ※本サイトのディスプレイ内の画像はすべてハメコミ合成です。
  • ※引用した会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。