下記の記事は2017年6月19日に「ITmedia PC USER」(ITmedia)に掲載されたものです。
最新デジタルサイネージを支えるエプソンダイレクトのPC
デジタルサイネージの今を伝える国内最大級のカンファレンス「デジタルサイネージジャパン2017」のエプソンダイレクトブースに伺い、最新の取り組みを聞いた。
大型ビジョンからショップのガラス窓まで、街を歩けばいたるところで見かけるようになったデジタルサイネージ。単なる広告配信を超え、空間アートとして街並みを飾り、公共の情報をインタラクティブに伝える新しいメディアとして注目されている。

6月7日から9日までの3日間、幕張メッセで開催された「デジタルサイネージジャパン2017」
そのデジタルサイネージの今を伝える国内最大級のカンファレンス「デジタルサイネージジャパン2017」(DSJ2017)が6月7日から9日までの3日間、幕張で開催された。ここでは、PCメーカーとして特定業務やビジネスの分野で強い影響力を持つエプソンダイレクトの展示ブースに伺い、デジタルサイネージ市場における同社の最新の取り組みについて、事業戦略・市場開拓プロジェクトリーダーである平澤利哉氏と事業推進部特定業務推進グループの手塚誠氏に話を聞いた。
顧客の声から生まれたエプソンダイレクトのデジタルサイネージ事業

DSJ2017に出展したエプソンダイレクト。
小回りのきくBTO PCメーカーの強みを生かし、デジタルサイネージの分野で積極的にソリューションを展開している
―― デジタルサイネージ事業への取り組みを始めたのはいつごろでしょうか?
平澤氏 我々がデジタルサイネージをターゲットとしてはっきり意識したのは2年くらい前ですね。それ以前からお客様のほうからデジタルサイネージ用途向けに我々の製品を選んでいただいてはいたのですが、お客様とやりとりする中で、サイネージ専用の端末では対応しきれない場面があるということが分かりまして、そこから意識して事業を展開するようになりました。
手塚氏 我々はビジネス向けPCの分野で長く事業を展開していますが、3年くらい前から、直接お客様へご訪問する機会を増やし「どのように使われているか」「どういったところにお困りの点があるか」といったことをヒヤリングしてきました。デジタルサイネージについても、この活動を通じて教えていただきました。先に我々の製品を活用するお客様がいらっしゃり、それならばもっとこの分野で使いやすいものを提供していこうと、事業として意識するようになったという流れです。


同社でデジタルサイネージ事業を推進する平澤利哉氏(写真=左)と手塚誠氏(写真=右)のお二人に話を伺った
―― デジタルサイネージという使い方を強く意識したことで、製品の企画開発において、これまでのPCとは変わった部分はありますか?
手塚氏 実際にサイネージで使われているお客様の声を聞いて、それを企画開発に反映させてきています。会場に展示している「Endeavor ST20E」は最初からデジタルサイネージで使っていただくことを強く意識して企画したもので、サイネージ用途での心配ごと、困りごとを解決するための様々な工夫を取り入れています。
平澤氏 1つの大きなポイントは、ファンレス仕様であることです。サイネージ用途では、大型の液晶ディスプレイの裏に設置したり、場合によっては壁の中に、建物の内装を施工する際に入れてしまうことがあります。そのため、PC内部にホコリが入り込んでもメンテナンスが難しく、それを原因とする故障を気にされるお客様が多くいらっしゃいまして、ファンレスにすることでその不安を取り除いています。
また、ディスプレイとの接続に使うHDMIケーブルには固定する留め具がないため、壁の隙間などに設置するときに抜けてしまって困るという声を聞き、しっかりとネジで固定できるクランプを用意しました。このほか、ACアダプターの抜け防止のクランプ、ケーブルを隠す背面カバーといったものも、お客様のご要望から取り入れたものです。例えば、HDMIケーブルを通じて本体とディスプレイの電源を連動させる機能は、ちょっとした工夫ですが喜んでいただいています。

小型PC「Endeavor ST20E」を紹介する平澤氏。
ファンレス設計でホコリへの不安を取り除くとともに、HDMIケーブルやACアダプターケーブルの抜け防止機構を追加したり、
HDMIケーブルによるディスプレイと本体との電源連動を搭載するなど、様々な使い勝手への配慮が盛り込まれている
―― サイネージ用途でメインで使われているのはこのEndeavor ST20Eが多いのでしょうか?
平澤氏 Endeavor ST20Eはまだ新しい製品ですので、実績ということですとEndeavor ST180Eが多いですね。ST20Eに比べるとボディーが少しだけ大きいですが、パフォーマンスはこちらのほうが高いので、パワーが必要な用途にも対応できます。あるいは、大型で9面のマルチパネルなどはさらに処理性能が必要になりますので、Endeavor MR8000やEndeavor MR4700Eなどが使われることもあります。

複数のパネルを組み合わせた大型サイネージでは高性能なデスクトップPCが使われることもあるという
―― デジタルサイネージでこのように大きなPCも使われているというのは意外でした。
平澤氏 そうなんです。大型のパネルに4Kや8Kといった超高解像度の動画、コンテンツの配信を行なうような場合はやはりパワーが必要で、このようなモデルも使われますね。
手塚氏 このEndeavor MR8000は、より大きなEndeavor Pro5800というワークステーションクラスのPCと同等のパワーを備えながら、ケースを小型化したものです。こういうPCが必要になるのは大型のディスプレイを使うときなので極端に小さい必要はないのですが、それでも大きいよりはコンパクトなほうがいいと、この製品が好まれています。2017年1月に先代モデルからリニューアルした際、ストレージの交換がフロントから簡単にできる「フロントアクセス」機構を搭載したことも特徴です。この機構もサイネージに使われるお客様のご要望に応えたものです。

タワーモデルと同じストレージのフロントアクセス機構をミニタワーに取り入れたEndeavor MR8000。
コンパクトでも高い性能と機能を備える
エプソンダイレクトが医療系サイネージに強い理由
―― こちらに大きなディスプレイとタブレットがありますが、この展示はどのような内容ですか?
手塚氏 この展示は、中規模のクリニックを想定したデモになります。上のプロジェクターで壁にイメージを投影して癒やしの空間を演出しつつ、大きなディスプレイで患者さんのための情報を表示しています。病院の案内、治療の案内、患者さんの呼び出しといった内容ですね。

中規模のクリニックを想定した展示。プロジェクターで壁にイメージを投影して癒やしの空間を演出
平澤氏 このタッチパネルPC(Endeavor TD160E)は病院側が操作する端末です。病院のスタッフが、受付番号と診察室番号を入力すると、こちらの大きなディスプレイに反映されて、患者さんを呼び出せるという仕組みになっています。タッチパネルPCで簡単に操作できるのがポイントです。

病院の受付スタッフが写真右下のタッチパネルPC(Endeavor TD160E)を操作して番号を指定すると、待合室のディスプレイに次の診察番号が表示される仕組み。 画面左のコンテンツは遠隔地のサーバから配信されるため、複数のサイネージの内容を簡単に入れ替えることができる
手塚氏 このソリューションはご協力いただいているメディネット様のシステムを使っているのですが、案内や雰囲気作りの部分も含めて、遠隔で制御して内容を入れ替えられるようになっています。病院側が、煩雑なソフトウェアの設定などを行う必要なしに、デザインや案内の内容を適宜替えていけるのです。
―― 医療系に強いイメージがあるのですが、特に力を入れていらっしゃるのでしょうか?
手塚氏 確かに医療系の分野ではよく我々の製品が選ばれていますが、特に医療系を狙っているというわけではなく、結果的に多く選んでいただいている形になっています。話を聞いてみると、我々のPCはホワイトを基調にしているため、清潔感があって病院の雰囲気に合うということが理由としてあるようです。
平澤氏 エプソンでは、ラベルプリンターやメディアのデュプリケーターなど、他の分野で医療系に実績があることもあり、一緒に導入していただけるというお客様もいらっしゃいますね。
インタラクティブなメディアへと広がるデジタルサイネージの可能性
―― 医療系のほかにはどのような導入事例がありますか?
平澤氏 公共系、地域の案内板やシネマコンプレックス(シネコン)にも使っていただいています。シネコン1つで40~50枚サイネージが必要になりますので、かなりの台数を導入いただきますね。
手塚氏 最近目立つのが飲食店のメニュー表示兼オーダー端末として15.6型タッチパネルPC(Endeavor TD160E)を活用される店舗のお客様ですね。人件費抑制や作業効率化のためにオーダー端末としてタブレットを導入する店舗が増加していますが、ファミリー向けや年配の方が多い店舗ですと普通のタブレットでは小さくて操作できない方がいるそうです。15.6型の大きな画面が、メニューを表示したり、タッチで操作するのにちょうどいいと好評をいただいています。

15.6型と一回り大きなEndeavor TD160Eは、写真でメニューを見せたり、
そのままタッチでオーダーできたりと、飲食店での活用が多い。
一方、10.1型のタブレット端末(Endeavor TN21E)はPOSレジや工場のラインに設置する端末などにも利用されている
平澤氏 オーダー端末というのは厳密にはサイネージとは少し違うのかもしれませんが、最近デジタルサイネージの定義は広がってきています。公共の情報を提供するサイネージにしても、タッチで触れることができて、触れた部分の内容に応じて、より進んだ情報、より最適な情報を表示できるものが増えています。単なるデジタル看板としてだけでなく、インタラクティブなメディアとしての可能性が注目されており、これからますます活用、導入が広がっていくのではないでしょうか。
最短納期2日、1日修理、PCメーカーならではの
生産体制と充実したサポート力も強み
―― お客様、あるいはSIerさんが、こうしたデジタルサイネージのシステムを導入したい、となったときに、御社の強みはどこにあるとお考えですか?
平澤氏 PCの基盤がある国内メーカーであることがまず1つ。国内生産により、最短2日でお届けします、修理は1日でしますといった体制を整えているほか、長期の定額保守サービスやサービスマンが出張訪問して修理を行うオンサイトサービスなども用意しております。
こうした点は、汎用のビジネスPCでもご好評いただいておりますが、専用機に対しても大きな優位点であると伺っています。PCと専用機では文化が異なるようで、納期1カ月、修理に2週間かかるといったこともあるようです。SIerさんの立場からいえば、在庫を持つ必要がなく迅速かつフレキシブルに対応できるということで、喜んでいただいています。もちろん、専用機には専用機のいいところもあり、お客様のほうでうまく使い分けていただいているようです。
手塚氏 おかげ様で、我々は、デジタルサイネージについて、いろいろとお客様から教えていただきました。PCの基盤、製品力、サポート力がしっかりとあり、それでいてサイネージ分野のノウハウを持っているというところが強みになるかと思います。
―― デジタルサイネージ事業で今後考えている展開、取り組みについて教えてください
平澤氏 引き続きお客様の声を聞きながら、より良いものを企画開発していきます。デジタルサイネージのトレンドは日々変化し、例えば、コンテンツの高解像度化・高画質化が進めば、小型でよりパワーが必要になるということも想定されますが、そうした製品の準備も進めています。これからもお客様の使われる環境に適したもの、お客様に喜ばれる製品を提供してまいります。
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